ストーリーテラーになりたい

私は超絶イケメンでスタイルも抜群です。それに高学歴で頭もいいし有精卵から故人まで好かれるほど性格もいいです。故にあまりに人気なので大学側が私を離すのが惜しいらしく「単位が足りねえんだよ」とか訳の分からない難癖をつけて私を大学に留めようとしているほどです。素直に言えばいいのに、全く大学もカワイイとこありますねえ。

そんなパーフェクト超人な私ですが唯一コンプレックスを抱えている事があるんですよ。

それは「声」です。


私を知っている人がこれを聞いたら「お前はそれ以前にその醜いツラと弱いオツムにコンプを感じるべきだ。というか最近お前は体臭が酷い」とかまた訳の分からない照れ隠しをするのでしょうがその問題は放っておきましょう。とにかく私は自分の「声」に対してあまりいい印象を持っていません。

私の声をどう表現すればいいのかは難しいのですけど、あえて表現するのならば「ガマガエルがワザとらしくラストクリスマスを歌ったような声」っという感じでしょうか?自分でも何を言っているのかよく分かりませんが、とりあえず汚らしい声をしているんですね。

この事実に気付いたのはふとしたきっかけなのですけど、これ以来何だか私は青臭いセリフを言う事に一層の恐怖を感じるようになったんですねえ。

青臭いセリフ、例えば「俺はレールの上を歩くのが嫌いだな。だって砂利道ににしか花は生えないだろ?」とかいう、あらまあ死んでくれ系の言葉ってのは前提として声がよくないと絶対にダメなんですよね。まあこういったのはその人のツラも大切ですけど、私は前に書いたように超絶イケメンなのでそこは問題ない。でも声がダメだと話にならないんですよ。

ですから多分私は死ぬまで「愛してる」の一言だけは言わないと思います。以前奇跡的に出来た彼女に「うーぴー(私のあだ名)私の事愛してる?」っと聞かれても「難しいところだ」と返したほどですからね。ってか今思うと私をそんなあだ名で呼ぶというのも相当だなあ。私うーぴーってかヒッピーみたいなツラと格好してますからね。おっと、いやいや私は超絶イケメンですよ。


そんな汚い声をしている私ですが普段はそれほど自分の声が汚い事を頭に置かず、屁をぶっ放しては「どう?キムチ食べたんだけどそれっぽい臭いする?」などと元気に知性溢れる発言を繰り返しています。


でもですね、私は一つだけ特技としたいなと言うものがあるんです。

それが「ストーリーテル」です。

私はあまり会話がウマくありません。話題も乏しいですし初対面の人の目を見て何かを話す事もあまり出来ないんですよ。だからと言ってはなんでしょうけど「持ちネタ」みたいなのがあればなあとよく思うんですね。

例えばジャンルで分けると「怖い話」「すべらない話」「ちょっといい話」なんかがそれぞれ5本くらい出来ればいいなあと思っているんですよ。でもそれが私の声でやるとかなり滑稽です。

例えば怖い話で私がよくやるものとしてこういう話があります。



一人っ子の私は、両親にとても愛されながら育ってきた。
特に母は私を可愛がり、
私が何か失敗をしたり、ちょっとした悪さをしたりしても怒ったりせず、
ニコッと笑って許してくれた。
親としては少し甘いのかもしれないが、私はそんな母が大好きだった。
 ある日、学校から帰って来て、リビングでテレビを見ていると、電話が鳴った。
母からだった。
「真奈美、今スーパーに買い物に来てるんだけど、冷蔵庫にニンジンがあるか、ちょっと見てくれる?」
私は「ちょっと待ってね」と言いながら、キッチンに向かった。
そして冷蔵庫を開けようとした時、あるモノが目に留まった。
冷蔵庫の上に置かれた、一冊の手帳。
あれ?と思いながら、私は冷蔵庫を開け、ニンジンがあるかないか確認して母に伝えた。
電話を切った後、私は、そっとその手帳を手に取った。
手帳は、母が昔から肌身離さず持ち歩いている物で、ずいぶんボロボロだった。
私は小さい頃から、この手帳の事が気になっていた。
何をしても笑って許してくれた母。でも覚えている。
私が何か失敗や悪さをする度に、母がこの手帳にサラサラと何か書いていたのを。
そしてそれは今も・・・
私はずっと、何を書いているのか知りたかった。
好奇心に支配された私は、罪悪感など微塵も感じずに、パッと手帳を開いた。
無作為に開いた手帳、その真ん中の方のページ、そこにはこう書かれていた。

『今日の真奈美 −3点 残り168点』



これ有名なコピペなんですがどうも私の声では臨場感が出ない。間とかも工夫したりしてみるんですけど、最後の『今日の真奈美 −3点 残り168点』って所がどうもマヌケになってしまう。

これを何とかしたいんですが「声」ってのはどうしようもない。


ですからM-1の予選、私が書いた台本でこの世のモノとも思えないくらいスベったのも、ニコ生で叩かれたのも、M-1の相方が「来年は俺が台本書くしお前とは組まない」というのも見当違いなんですよ、僕の「声」が悪いんですよ、っといい訳をしておきたいものですね。