男は芋になった
中学一年生。野球とナマズ飼育に心を奪われていた私に母親は言った。
「あなた、どことなく江口洋介に似ているわね」
高校一年生。特にトレーニングもしないのに、男性ホルモンのおかげで筋肉質になった私に母親は言った。
「あなた、どことなくダルビッシュに似ているわね」
高校三年生。髪をほぼ坊主まで切り込んだ私に母親は言った。
「あなた、どことなくサッカーの中田に似ているわね」
浪人時代。ぶくぶくと90キロまで太った私に母親は言った。
「あなた……ジャガイモに似ているわね…」
そう、私はイケメンからワイルドイケメンに。そしてそれが過ぎてジャガイモになってしまった。まさかダーウィンもビックリのタンパク質からの炭水化物になってしまった。ただし注意して欲しいのは、これは私を愛してやまない母親の言葉である。冷静になって中学と高校の卒業アルバムを見てみると、江口もダルも中田もいない。アイダホで有名な炭水化物がニカニカと笑っているだけである。
そして大学四年になって私は鏡に向かって呟く。
「私は相場君に勝っているのでは…」っと。
最後に母親はいう。
「どうでもいいから早く大学を卒業しなさい」っと。