サムライとの戦争
日曜日の午後に電気釜でスパゲティを茹でるという、何ともハイソで東京新宿にいながらナポリの香りがする日曜日の午後を送っていたのですが、やっぱり電気釜は電気を食うのかブレーカーが落ちちゃったんですよ。
っで私の住んでいる場所のおかしなところが、ブレーカーというものが下の階の住人のところにありそいつを弄らない事には私の部屋に電気はこないという作りになっているんですね。
下の階の住人というのが中々のダメオヤジで健康保険は払ってないわ、ガス代は払わないわの結構ロックンロールなオッサンなんですよ。
家賃は払わないけれど一応電気が来ない事には、タラコスパゲティを食べながら昼から金麦を煽るというナポリな生活も出来ない訳で、嫌々ながら「すんませーん上の階の者ですけど」っとやった訳ですよ。
するとどうだろう、出やがらない訳。
いやね、留守なら分かるんですけど明らかにテレビの声は聞こえるわエアコンの冷たい冷気は漏れてるわ、ダメ押し的にジョボジョボとションベンぶっ放してる音が聞こえる始末。
流石健康保険を払っていない奴だけあります。まあ訪ねている私は年金払ってないんですけどね。
しかしこれは何とかしなければいけない。
って事でそのオヤジが外に出てくるまでの待ち伏せ作戦決行!ってな事にして、ドアがあく音が聞こえる階段近くでタバコを燻らしながら待ってたんですわ。
けれども風通しがいいその階段に座っていたら何とも気持ちがよくって、三時間ばかり寝てしまったんですよ。
年金未納だけど私も可愛い所があるでしょ?
あたりもかなり暗くなっていて、オッサンの部屋がどうなっているか分からなかったので聞き耳を立ててみると・・・何と今度はオッサンのイビキが聞こえてきやがる訳ですよ。
ハッキリ言ってブチギレですよ。まあ良く考えると寝る事自体は何も悪くないんですが。
しっかし大きくて優しい力持ち、でもちょっぴり気の弱い184cm、出生時の体重が4563gのくまそは特に何も手を打つことなく、また惰眠を貪る事となってしまいました。
すると今度はドアの開閉音でハッと目ざめ、やうでやしっと寝ぼけ眼のまま急いでオヤジを捕まえに階段を下りてオヤジの目の前にドンっと立ちいざ勝負!って時にそのオヤジの着ているTシャツに書いている文字を見て一瞬たじろいでしまいました。
「侍魂」
デカデカとそうプリントされたTシャツを着た寝ぼけ眼のオッサンは、寝ぼけ眼の私と対峙してしまったのです。
こんな汚い光景は滅多にない。
そんな事がありつつ何とかブレーカーを上に引き上げてもらって、私の家には文明が注入されはじめた訳です。
青春の貴重な一日を国民皆保険に逆らうサムライに妨害された若人は、部屋に帰りデロデロになったスパゲティと、水が滴る冷蔵庫を見てがっくりとするのでした。