曇りなき眼

ジブリ作品は左翼映画だ!」

いつだったか大学1、2年の頃の話です。その日僕らは退屈を紛らわすように、仲間内で他愛もない話をしていたんですよ。何の事はない、普通で平和な光景です。しかし映画好きの奴がジブリ作品の話を始めるや否や、友人の山本君は上記の一文を叫びだし、平和な光景をバリバリとブチ壊すではないですか。山本君は当時とある政治組織に入っており、ヤクザな事務所にも通い詰め、講演会を開いたりと本格的かつ積極的な右翼活動をしていました。彼はその後に右翼思想を捨て、日本ピンサロ研究会という巨大風俗組織の一員として、風俗業界でもって頭角を現す事になるのですが、上記の発言は、この頃彼は思想の転向のきっかけとなる「池袋・南の島」という伝説的なピンサロに出会う前の事だった。彼の人生に南国の風が優しく語りかける前の話だった。

世の中の人のほとんどはスタジオジブリを知っていると思います。可愛らしいアニメーションや独特のファンタジーな世界観から、女性を中心に人気があるように思われる節もありますが、そんな事はありません。高校時代、受験勉強でノイローゼ気味になっていた友人の小松君はげっそりとした顔で「くまそ君…昨日、もののけ姫を徹夜で3回見てて気づいたんだけど、アシタカがヤックル!って叫ぶ回数。あれは見る度に変わるんだ…」なんて言ってましたし、男の子にも根強い人気があるんだと思います。

というか日本人であるならばジブリ作品を見ていない人はかなり少ないのではないでしょうか。日本人でジブリ作品を見た事が無いってのは、ピンサロ狂いを豪語しておきながらピンサロの聖地・大塚に行った事が無いのと同じで、日本人ならハポンモグリ、ピンサロマンならピンサロモグリ、略して色々いじって「ピグモン」と裏で陰口を叩かれる事になるやもしれません。

かくいう私も素股オシャブリ、じゃなかった、スタジオジブリの作品は大好きです。特に好きなのはやはり不朽の名作と名高い「もののけ姫」ですね。


さて、少し話が飛びましたが、件の山本君の発言に話を戻しましょう。


ジブリ作品は左翼映画だ!」


そう叫ぶ山本君は自論を展開し始めます。何でも彼は、そのあまりに初々しい恋愛描写で青年の自殺率底上げに貢献していると噂の「耳をすませば」が大好きだったらしいのです。そんなセンチメンタルまっしぐらの映画で感動できる彼がその後、どうして吉祥寺の伝説的なピンサロ「レモンクラブ」にご執心になるのか、そこのところの精神構造はイマイチ分からないのだけど、まあアレだよね、人間って本当に逞しいからね。彼は今実家がある埼玉県に、吉祥寺からピンサロで疲れた体を引きづって家路につく途中カントリーロード聞いても、最早何も思わないんでしょうね。

話がそれました。彼はジブリ映画における自らの自論を展開し始めたのです。「耳をすませば」が大好きな彼。それが講じて、「耳をすませば」のロケ地を一人で巡っていたそうな。そしてその中で雫の父が勤める図書館とされる場所に行った時、彼ははたと気づいたらしいのです。


耳をすませばは左翼映画だった…」っと。


何でもその図書館の中に入ると図書館の掲示板に民青(共産党の学生組織のようなもの)がデカデカと貼りつけられ、そのポスターを見た直後、彼はその図書館が左翼図書館であった事を確信したと言うではないですか。しかも勝手に雫の父を「学生運動のやり過ぎで就職出来なくなった悲しき活動家」と決めつけ、政治セクトが哀れに思い、セクトが運営している図書館にねじ込んだのだ、っと彼は結論づける気合の入れよう。ってか左翼図書館って何だよ。

そんな話をあんぐりと口を開けて聞いていた私たち。しかし山本君の興奮は止まりません。次は「もののけ姫」を例にとり、あれは「神殺し」の映画であり、たたら製鉄で財を成した資本家エボシが最後に「共生」を標榜した事は、神がいなくなった世界にこそ真の共生が生まれるのだという事を説いているのだと彼は続けます。

そこら辺から私はほとんど理解が追いつかなくなっていったので話の大半は覚えていませんが、とにもかくにも山本君はジブリ映画を批判しまくるのです。恐る恐る「じゃあトトロは、トトロはどうなのですか?」っと消え入りそうな声で質問をする他の友人。よもやあの可愛らしいキュートなゲテモノ、トトロが思想を持つ生き物などとは誰も思いません。しかし理論武装は完璧でした。


「トトロはな、トトロは共産ゲリラだ!」


力強くそう言い放つ彼の目に、最早「耳をすませば」に感動していた少年の目はありません。彼は大義の為、多くの事に「耳をふさげば」を繰り返していたのでしょう。

それからは他の友人も混じってジブリ映画の裏話が始まります。その中で聞いた話によると、「千と千尋の神隠し」は日本の遊郭を模した映画であり、千は貧しい家庭から売られていった娘だというのです。そしてお父さんとお母さんが豚になるところなどは、娘の身売りで得た金で身も心も豚のように腐っていく、農村の両親の様を表しているというではないですか。

真意は置いておいて、正直な話ショックでした。私の従姉妹は三姉妹で、千と千尋の神隠しが大好きなのです。大好き過ぎてビデオとDVDの両方をお年玉で買ったりしているのです。それが何ですか、遊郭の話だとかいうじゃないですか。あまりに可哀想です。言い方を変えると、三人姉妹そろってお年玉を風俗関係のDVDとビデオにつぎ込むって事になるじゃないですか。何だか凄い狂気を感じますし、可哀想と思うと共に、ちょっと興奮するじゃないですか。三姉妹と千と千尋を鑑賞するなんて機会があったら、そのエロスと社会問題と日常の狭間で、私の股間はタタリ神になりかねない。股間のオトコヌシがヤバい!本当、人間って逞しいよね。


しかしですね、こんな色んな事考えて映画見てもあんまり面白くないと思うんですよ。何も考えずに、それこそ半分口を開いてヨダレ垂らしながら「うう〜ん、気持ちいい…」なんて、恐らくピンサロで山本君がやってる顔して見てた方が絶対にいい。山本君はそれに気づいて「新宿・PM」で今日も指名料の2000円を、ご機嫌な顔して何も考える事なく嬢の谷間にねじ込んでいるはずだ。頭で何も考えずに、ありのままの姿を曇りなき眼で見ればよいのだ。そして感じればよいのだ。

そりゃあ純粋に映画や本を楽しんでばかりだったら、大学の学問に、なんちゃら表現論やらイマラチオ概論やらが存在しないってのは分かる。より背景知識を付けた方が楽しめるって人がいる事も理解しているつもりだ。

しかしこれを見て頂きた。そしてこの動画に書かれているコメントの悲惨さを是非とも見て欲しい。


芦田愛菜 CM 日清チキンラーメン ひよこ売り子


この動画、誰が何と言おうと圧倒的絶対的に可愛いじゃないですか。このCMの愛菜ちゃん、たまらないじゃないですか。可愛い愛菜ちゃんに、可愛い着ぐるみ。可愛い+可愛い=失禁、ってな、名古屋的発想がまたいい。オニギリおいしい!天ぷらおいしい!天むすで失禁!みたいな、そんな発想が素晴らしいじゃないですか。

それなのにコメント欄に巣くう豚ども言ったらない。


・「可愛いから何でもさせられるねーww」
・「きらい! 私にとってのチキンラーメンネガティブキャンペーン」
・「このCM流れたらチャンネル変えるのが日々の作業になった」


何なんだお前ら、何を考えて生きてんだタコ介どもが!可愛いから何でもさせられるんじゃなくて、可愛いから何でも出来るんだよ。土井たか子がヌイグルミ被れると思うか?あのラブリーなソングを歌えると思うのか!それにな、何がネガティブキャンペーンだ。チキンラーメンみたいな袋ラーメンは、俺みたいな金のない低能がモリモリ食うもんなんだから、ネガティブもポジティブもねえんだよ。どんな状況でも買うんだよ。そして中でも一番酷いのがこれ。

・「このような人達は同世代の付き合い方がわからないから、今後、絶対苦労するそして、人気がなくなったら…さぁ楽しみだ」


どうして素直に可愛いと言えないのか、どうしてありのままの愛菜ちゃんを見てあげる事が出来ないのか。どうして愛菜ちゃんの後ろにある、絶対綺麗じゃないし、ラブリーとは程遠い何かまで見ようとするのか。おまえらが愛菜ちゃんぐらいの時こんな事をネットで書かれたらどれだけショックか想像がつかないのか!ネットの誹謗中傷は一生消えない落書きなんだぞ!土井たか子さんごめんなさい!

私だって思う所は沢山あるのだ。演技があまりにもワザとらしい時があるとか、将来的にそんなに可愛くなりそうにないとか、私だって色々思う所はあるのだ。生理がいつ来るんだろう?とか一日中考えてるし、とにかく私にも考えてしまう事は沢山あるのだ。

しかしそんな頭から流れ出す声を意識的にでも遮断し、ありのままの姿を見る事が絶対に重要だと私は思うのです。ジブリの映画だってそりゃあ考える所は沢山あるでしょう。でも面白い、面白くない。この二択だけでいいじゃないですか。

最後に、コメント欄に一人曇りなき眼の持ち主がいましたので、その方のコメントを読んで締めたいと思います。

「お前ら曇りなき眼でこのCMをみろよ!どう考えても可愛い。圧倒的絶対的に可愛い!特に0:14とか神!たまんない!沢山チキンラーメン買って、次回作にも愛菜ちゃんを使ってもらえるように協力しようぜ! KUMASOMAN」


みんなもチキンラーメンを沢山食べて大きく、頭のおかしい人になろう!さあ、僕のように!